さりげなく・・・

「何で?そうなの!?違うじゃん!」を綴ります。

『目は口程に物を言う』でしょ! 山本大臣殿。

 

 「閉会中審査」視聴率はどのくらいだったでしょう? テレビとラジオで。(ネットもあったかな?)

 

 今日は、「奇形心臓」の2か月に一度の受診日で、午前10時ころから午後2時過ぎまで病院に居ましたが、待合室のTVの前には、入れ替わり立ち替わり患者さんたちが来て見入っていました。

 

 菅官房長官、山本大臣、荻生田官房副長官他を前にして、「前川さん」の圧勝でしたね。野党側の攻勢に何とか一矢を報いたい与党側の質問者も空砲でした。

 

 「あったことをなかったことにするのは、とても難しいことです。何事も。」

 

 苛立つ菅官房長官は、「今治市に聞けば・・・」と答弁放棄、山本大臣はブログのタイトルにあるように、視点が泳いでいました。「ウソ」を言っています・・・と言いたげに。「目は口程に物を言う」です。それを隠せるほど山本大臣は「悪い人間」ではないですね。言わされているだけでしょう。 「飼い犬」の宿命です。

www.jiji.com

  言わされているのは山本大臣だけではなくて、その他の方全員が「あの方」の命令で言いたくもないことを言い放っていました。国会での発言は「残り」ます。「あったことをなかったこと」にはできません。後で「そんなこと言っていません」などとは言えません。

大変な背負いものをしてしまいましたね。

 

 

 あまりの暑さに「水浴び」。

f:id:tomy2291:20170710120320j:plain

f:id:tomy2291:20170710120214j:plain

f:id:tomy2291:20170710120236j:plain

気持ちよかったようです。

f:id:tomy2291:20170710120226j:plain

 カメラ:PENTAX Optio VS20 Compact Digital Camera
 撮影地:横浜市泉区 2017/07/10

 

 

 

 さて、「愛読書」から。少し長文です。

 

月刊誌「世界8月号」から引用。(下線追加、字体変更など加えてあります。)

世界 2017年 08 月号 [雑誌]

世界 2017年 08 月号 [雑誌]

 

 「世界8月号」P.35~

 

 『メディア批評』 神保太郎

 

 「中間報告」という「搦め手」を利用して強行採決された「共謀罪」法案。ここに至り、議会、国連軽視目にあまる安倍政権に対し、声を上げる人びとが次々と現れている。それによってにわかに活気づき始めたメディアは、歩みを進めることができるのか。

 

 (1)この国の崩壊止める希望 健闘する女性たち

 

 ■「普通の人」はメディアを越えて

 

 6月15日、自民・公明はにわかに、参院本会議開催へと動き、共謀罪法案可決を急いだ。審議を求める野党の声は無視、参院法務委員会における審議の「中間報告」を委員長にやらせただけで即採決という乱暴なやり方だった。危うくなった「加計」問題幕引きの狙いがありあり。もう恥も外聞もないということか。維新の会も抱き込み、徹夜のあと翌16日早朝に採決を強行、賛成多数で共謀罪法を成立させたが、参院の権威を大きく傷つけ、議会政治への不信をいっそう募らせた。

 

 それでなくとも、すでに森友学園問題以来、官邸・内閣府にたむろする腹黒い輩や、彼らの意向を忖度、もっぱらその実現に腐心する役人たち、さらには両者合作の策謀の政策化にのみ大わらわな国会などの惨状には、うんざりだった。そこに犀利なメスを入れ、明快に正邪を糺すことができるのはメディアだ。だが、これまたぐちゃぐちゃな世界に足を取られ、溺れかねない状況にある。そこに奇跡が起こった。前川喜平文科省事務次官の出現だ。彼の証言の衝撃については、本欄前回でお伝えしたが、この国にもまだ世間に通じる言葉で語れる普通の人間がいたのだという安堵感が、希望を蘇らせてくれた。すると、官邸周辺でも国会のなかでも、またメディアの世界でも、普通の人たちが、このままいけば腐り果てるだけのこの国を、なんとか窮状から救い出そうと動きだし、その勢いは、共謀罪法案強行採決ののち、さらにいっそう強まる気配だ。

 

 そうした動きを生み出す多くの人びとのなかから目立つ役者を探せば、筆頭はなんといっても前川前次官。だが本稿では、首相の「腹心の友」が営む加計・今治医大学新設騒動をめぐるさまざまな局面における、女性たちの活躍に目を向けたい。衆院では民進党山尾志桜里議員が頑張ってきたが、参院では自由党森ゆうこ議員の鋭い追及が注目された。6月1日の農林水産委員会では安倍親衛隊の筆頭格、萩生田光一官房副長官を問いつめ、彼がかつて加計・千葉科学大学の有給客員教授であり、現在もなお、無給ながらその地位にあることを認めさせた。「バリバリの利害関係者じゃないですか」と森議員。萩生田副長官は内閣府人事局長でもある。第2次安倍政権が新設した同局は、全省庁から幹部人事の決定権を取り上げ、これを一手に掌握した。だが、自分のところでは勝手放題だ。

 

 森議員は6月8日の同委員会では、かつての熱血漢、「ヤンキー先生」だった義家弘介文科副大臣に加計文書の確認を迫り、ウンもスンもない返答に終始する彼の態度に呆れ、「恥ずかしくないんですか、自分が昔どう呼ばれていたか、忘れたんですか」と叱咤した。国会に提出した多くの文書資料に基づいて追及を続ける議員に、委員長は、時間がない、質疑をまとめろと、何度も繰り返すだけで、答弁者に明確な回答を促すこともしない。「なんでなんですか、自民党! お開きだよ、こんなの」と質問を止め、風呂敷をまとめて出ていく議員。そして圧巻は13日の委員会。萩生田、義家の2氏のほか、藤原豊内閣府審議官と文科省審議官も顔を揃えていた。議員はここでは、文科省の加計文書の所在と併せて、内閣府を訪れた文科省幹部の実名も問い質した。いずれも、前川前次官の証言のなかにあった件だ。だが、4人とも議員の質問にシラを切る。議員は最後にいう。「国民にわかるように知らせたほうがいいですよ。責任取らされるのはあなたですよ」

 

 ■メディアの「異端児」

 

 議員が頑張れば、取材記者も頑張る。なかでもひときわ目立つのが、東京新聞社会部の望月衣塑子記者。6月8日、菅宣房長官に食らいつく記者の質疑の一場面を、ネット動画から紹介する(カッコ内は筆者補注)。

 

 望月:東京新聞・望月です。……(前川前次官の)出会い系バー通いについては、杉田(和博)副長官(内閣官房副長官。 元警察庁警備局長・内閣官房内閣情報調査室長)が、昨年の秋に 注意しているということですが、(……)その時期になぜ前川さんのそういう行動が把握できたのか、(……)これ、たまたまだと思うのですが、同時期に読売新聞社さんの社会部さんも取材しているということで、これ何か、読売新聞さんの取材と関連性があるのか、について、「承知していない」ということなんですけれども、杉田副長官に確認して、実際なぜこの時期にそういうことを知りえたのかをお 聴き願いたいんですけれども。

 

 菅:あの、まったく今、言われていることは、私は失礼な話だというように思います。報道社に対してもですね。そこは直接、そちらに取材されたらどうですか。

 

 こうしたやりとりが延々とつづくが、記者はひるまない。あいだに他社の男性記者も質問するが、望月記者はまたすぐに立って、ほかの質問に移り、官房長官がはっきり答えないと、同内容の質問を、視点を変えて繰り返し、食い下がる。するとジャパンタイムズの男性記者が望月記者の追及に加わり、関連質問をぶつけだした。この長い会見が終わると、長官は顔を歪め、嫌なものから逃げるように、駈け足で会見会場を後にした。いつにない姿だ。動画投稿者は「望月さんは政府の文書再調査決定を促した功労者」と書き添えていた。だが、官邸の記者クラブでは評判が悪く、彼女の取材に関して東京新聞に抗議を申し入れようという動きが生じかけた(6月14日付日刊ゲンダイ2面)。情けない。

 

 ■立ち上がる一般女性

 

 つぎは報じられる側の女性の見事さを紹介したい。最初が、文科次官現役時代の前川氏が通っ

たと読売が報じた「出会い系バー」で働いていた女性、「週刊文春」6月8日号に登場した「A子さん」。彼女は、そのバーの女性たちから「まえだっち」と愛称されていた前川次官から激励され、挫折から立ち直り、百貨店の女性服売り場に再就職することになったいきさつを踊っている。彼女は身の上話を聞いてもらい、助言だけでなく、ときには小遣いまでもらったという。彼は、店のほかの多くの女性にも同じように接していた。「A子さん」の証言は、官邸や読売新聞の薄汚い魂胆を小気味よく跳ね返すものだった。

 

 そしてもう1人が、5月29日、東京・霞が関の司法クラブで自分の強姦被害を告発する記者会見を開いた「詩織さん」。性暴力被害を受けた女性が、顔出し・実名でメディアの前に立つのは極めて稀だ(名字は家族の要望で伏せた)。事件は2015年3月、訴える相手は当時TBSワシントン支局長(現在はフリーのジャーナリスト)だった山口敬之氏。高輪署が捜査に入り、容疑事実を固め、罪名「準強姦罪」で逮捕状を発行、容疑者逮捕に向かったが、逮捕寸前に警視庁判断で逮捕状が失効とされ、検察も不起訴の判断を下した。この措置を不服とし、検察審査会の判断を仰ぐこととしたが、その発表のための会見だった。しかし、事情はもっと複雑だ。逮捕状不執行を指示しだのが菅官房長官の元秘書官だった中村格警視庁刑事部長(当時。現在は組織犯罪対策部長)であり、彼は警察庁元警備局長の杉田内閣官房副長官ともつながる。一方、山口氏はかねて首相やその周辺要人と昵懇の間柄で、自著『総理』(2016年6月刊。幻冬舎)も楽々書ける人物。「詩織さん」の勇気ある告発は重大な意味を帯びるものとなった。

 

 もう1人は、特定非営利法人「情報公開クリアリングハウス」の三木由希子理事長。6月9日に「加計学園問題で文部科学省による再調査の実施に対する声明」を発し、「行政文書」たるものの公開がいい加減で、「再調査」が中途半端なら、情報公開訴訟を提起し、徹底的に司法の場で争う、との意向を表明した。最後は番外、私が行きつけのバーのママ。15日の強行採決に怒り、「来年の花見にはみんなで双眼鏡とカメラと地図を持って出かけましょう、場所は靖国神社」とのたまわったところ、居並ぶ客みんなの喝采を博していた。19日朝刊は、軒並み安倍内閣支持率の大幅下落を報じた。さらに同夜のNHKクローズアップ現代」が、加計・今治医大の開学時期を決めたのは総理と証す萩生田副長官の言明を記した文書の所在を報じ、20日各紙朝刊を賑わせ、追い討ちをかけた。

 

 ■厚みを増すネットメディア

 

 以上の出来事は、週刊誌・即売新聞、テレビ朝日・TBSなどのメディアも伝えてきたが、ユーチューブ、フェイスブックツイッターなど、ネットの情報として流布されていたものが非常に多いことに気づかされる。音源付き動画の転載もあるが、国会中継・記者会見など、マスコミではみられない長時間ものが登場するのにも驚かされる。これらと比べると、大新聞・NHKなどの伝え方・論じ方には、安倍政権に対する姿勢は別としても、不満が残る。ネットのなかで最近、リテラ、バズフィード、東洋経済オンライン、日刊ゲンダイDIGITALなど、個性の強いサイトが、多くのネットーユーザーに支持されるようになっている様子がうかがえるが、既存メディアもこうした動向を重視する必要があるのではないだろうか。

 

 アメリカではトランプ氏の大統領選出馬・当選・就任を通じた記者会見で、メディアが容赦ない質問を浴びせ、いい加減な返答には厳しくチェックを入れたが、これに対し同氏は、CNNやバズフィードなどを狙い、その記者たちに向かって「お前のところのニュースはフェイク(嘘)ばかりだ。出ていけ」と大声で罵った。だが、ニューヨーク・タイムズ(NYT)やワシントン・ポストの記者たちもこれらの仲間を応援、一緒にトランプ氏に反撃を加えていた。この構図は現在も変わらない。すると興味深い事態が生じた。2016年に始まったNYTの有料電子版の読者が急増、その勢いは17年にもつづき、同紙によると「紙と電子版を含めた有料購読者数の合計が300万件を超え、過去最高水準になった」というのだ。1月28日、トランプ氏がツイッターで、同紙の報道を「不誠実」と指摘し、「購読者数は縮小している」と述べたのとは真逆だ。

 

 同紙の今年2月2日の発表によると、前年第4・4半期(10~12月)の対前期(7~9月)売上は、広告収入が10%減だったが、これを購読料収入5%増が補い、トータルで1%減に止めることができたという。有料電子版の伸びがつづいており、広告も紙より電子版のほうが伸びが大きいので、間もなく総売上が増加に転じることも見込まれる。すると同紙は5月31日、媒体づくりの戦略的な体制転換方針を明らかにした。その大筋は、記事の校閲などに従事する内勤編集者を大幅に削減、編集工程を圧縮し、それによって浮いた資金で取材記者を100人増員する、というもの。読者代表として有識者を招き、意見を述べてもらうパブリック・エディター(PE)制も廃止するという。サルツバーガー社主は「もうSNSのフォロワーやインターネット上の読者が十分に監視役を果たすようになっている」と述べ、PEは役割を終えたとする見解を明らかにした。その代わりに「読者センター」を新設、電子版に対する応答機能を高めるという。

 

 どうであろうか。日本の新聞・出版、放送も、根本的に仕事のやり方を変えていく必要に迫られているのではないか。

 

 (2)国連特別報告者を「断罪」する新聞

 

 日本での表現の自由の状況を調査していた国連人権理事会の特別報告者、デービッド・ケイ米カリフォルニア大学教授が6月12日、「政府が直接、間接にメディアに圧力をかけている」とする調査結果を理事会に報告した。当メディア批評では、安倍晋三政権下で起きている表現や報道の自由への威嚇の実態を、繰り返し取り上げてきた。その立場からすると、ケイ氏の指摘は至極まっとうな内容だ。これに対して、読売や産経は「ケイ報告」を激しく批判している。たとえば、読売社説「国連特別報告 メディアへの誤解が甚だしい」では「杜撰極まりない代物である。日本の一部の偏った市民運動家らに依拠した見解ではないか」(6月14日)と言い切り、産経主張(社説)も2回取り上げ、「国連特別報告者 嘘をまき散らすのは何者」の中で「国連の名を冠した「嘘」に黙っていては誤解が広がるばかりだ」(6月2日)と断じている。両紙は「ケイ報告」のどの部分を誤解や嘘だとしているのか。

 

 ■放送支配もくろむ政府

 

 読売や産経は主に2点を問題視しているようだ。1つは、ケイ氏が放送法4条の撤廃を求めたこと。同4条は、放送番組の編集にあたって放送事業者に、(1)公安及び善良な風俗を害しないこと、(2)政治的に公平であること、(3)報道は事実をまげないですること、(4)意見が対立している問題については、できるだけ多くの角度から論点を明らかにすること、を求めている。2016年2月、高市早苗総務大臣衆院予算委員会で、政治的公平に違反するような放送を繰り返した場合、電波法67条に基づき総務大臣の命で停波できる、との政府解釈を示した。同条は放送事業者が配慮すべき倫理規定であり、これを根拠にした停波を違憲とする研究者の主張と、政府とが対立、大きな議論になった。ケイ氏の来日はその直後の4月だった。

 

 主要な民主主義国の大臣には、日本と異なり停波を命じる権限はない。米国では連邦通信委員会FCC)、英国では通信庁(Ofcom)、フランスでは視聴覚最高評議会(CSA)といった、政府から独立した合議制の機関が監督しているからだ。ケイ氏の報告でも「国際基準では、放送規制は独立した第3者機関が行なうべきだ」とし、日本のように独任制の総務大臣が権限を持っていることに対して、「この枠組みは、メディアの自由と独立への不当な規制につながる可能性がある」と指摘している。民主主義国家として備えているべき要件を、日本の放送制度は欠いているというわけだ。「停波発言」は、ケイ氏には当然放送への圧力と映った。「日本におけるメディア規制は、政府、特に時々の政権与党から法的に独立していない」と訴えるのも頷ける。

 

 もともと日本も欧米と同じだった。連合国の占領下だった1950年に成立した現行の放送法は、FCCにならって内閣から独立した電波監理委員会の所管だった。ところが、日本が主権を取り戻した52年、吉田茂政権はさっそく委員会を廃止し、思い通りにしやすいよう郵政大臣の所管に変えた。それでも当初は、放送番組の介入に慎重だった。放送法4条に違反したかどうかを郵政大臣が判断すること自体困難だという立場で「精神的規定の域を出ない」とし、停波(行政処分)は「事実上不可能」という見解を国会などで表明してきた。こうした姿勢は行政指導についても同じだった。

 

 これが大きく変わるきっかけとなったのは、85年にテレビ朝日のワイドショー「アフタヌーンショー」で起きた、中学生やらせリンチ事件である。郵政大臣は初めて文書での行政指導を行ない、今日の法解釈につながるものへと転換していく。停波を命じたことはないが、行政指導は85年から2015年までに36件あり、このうち実に8件は第1次安倍政権(06年~07年)でのことであった。民主党政権(09年~12年)下ではなかったが、自民党が政権復帰すると、16年に高市総務大臣NHKに対して行ない復活した。

 

 これだけではない。安倍首相は、NHKの経営委員に自分の支持者らを次々に送りこんだ。第1次政権では古森重隆氏(富士フイルムホールディングス社長)、小林英明氏(弁護士)、第2次政権では百田尚樹氏(作家)、長谷川三千子氏(埼玉大学名誉教授)、本田勝彦氏(日本たばこ産業顧問)、中島尚正氏(東京大学名誉教授)といった面々だ(肩書きは当時)。

 

 自らの政権益のために、NHKのラジオ国際放送まで利用する。菅義偉官房長官総務大臣だった06年、北朝鮮拉致問題を重点的に取り上げるよう命令を出した。こうした任命や命令は違法ではないかもしれないが、明らかに濫用である。

 

 読売社説はどう論じたのか。「政府は、放送局の独自性を尊重し、穏当な対応をしてきた。適正な番組作りを放送界の自主努力に委ねる。この流れが根付いてきたことは間違いない」。産経主張は「政府の圧力に日本のメディアが委縮しているとの指摘は、報道機関としても首をひねる」(6月15日)とする。

 

 日本政府も反論書の中で、「放送における表現の自由や独立性は、放送法の枠組みにおいて適切に確保されており、「脆弱な法的保護」という指摘は当たらない。放送法の解釈及び運用が放送メディアに対する圧力となっていない。事実誤認だ」としている。しかし放送史は、読売・産経や政府の反論とは正反対であることを示している。

 

 ■政府見解に添う読売・産経

 

 両紙が問題とする2点目は、慰安婦について。中学歴史教科書での慰安婦記述の減少は事実だ。「ケイ報告」は「第2次大戦中の犯罪について学校教百がどう扱うかに関して政府が介入することは、一般市民の知る権利や過去について理解する能力を損なわせる」と指摘し、「学校教材における歴史的出来事の解釈への政府の介入を慎み、第2次大戦中に日本が関わった深刻な犯罪を国民に知らせる努力を支援することを求める」と要請した。

 

 手元に『日本軍「慰安婦」問題すべての疑問に答えます。』(合同出版)という本がある。編著はアクティブ・ミュージアム「女たちの戦争と平和資料館」(WAM)だ。同書には、ある興味深い調査結果が掲載されている。1993年度、97年度、2002年度、06年度、12年度版の中学歴史教科書での慰安婦の記述状況を調査したものだ。それによると、慰安所設置への旧日本軍の関与や本人たちの意に反してになって、新たに参入した1社が記述したことで復活した。

 97年は、慰安婦を記述した中学歴史教科書問題のスタートだった。前年には国連人権委員会の特別報告者、ラディカ・クマラスワミ氏が慰安婦に関する調査結果を提出している。しかし、同時に政治は逆方向に動き出す。安倍首相が事務局長、故・中川昭一氏が代表を務める「日本の前途と歴史教育を考える若手議員の会」が2月に発足し、年末に『歴史教科書への疑問』(展転社)が出版された。同会のメンバーには、衛藤晟一(幹事長)、高市早苗(幹事長代理)、古屋圭司(副幹事長)、下村博文(事務局次長)、山本一太(同)、菅義偉(委員)、佐藤勉(同)といった、20年後の安倍政権を支える顔ぶれが名を連ねていた(肩書きは当時)。同会の目的について中川氏は、「いわゆる「従軍慰安婦強制連行」を始めとする教科書の記述等を調べる為の研究会」と同書で紹介している。

 

 そして、2000年に検定申請された4社の教科書から慰安婦記述が消え始め、安倍首相(当時は官房副長官)をはじめ「若手議員の会」のメンバーが関与した、「女性国際戦犯法廷」(00年12月開催)を取り上げたNHKの特集番組01年1月放送)の番組改変につながるのである。

 

 「具体的にどのような事項を取り上げ、どのように記述するかについては、欠陥のない範囲において、教科書発行者の判断に委ねられており、そのうち慰安婦について記述した教科書もある。政府の方針や政策または政治的な意図が介人する余地はない仕組みとなっている」

 

 「複雑な背景を持つ慰安婦問題を取り上げるか否かは、あくまで教科書会社の判断による。高校の歴史や公民の教科書の多くは、慰安婦問題を扱っている。教科書検定では、日本軍が慰安婦を強制連行したとする記述があれば、修正を求められる。強制連行を示す資料は確認されていないことに照らせば、当然である」

 

 どちらがケイ報告への政府の反論か分かるだろうか。答えは、前者である。後者は読売だ。 産経の主張は、あるテーマについて口をつぐむ点でも読売と重なる。そのテーマとは、記者クラブ制度である。ケイ報告は、記者クラブメンバーでなければ警察の記者会見に参加できず、メンバーだけが非公式で独占的な情報提供を求めることができる現状を指摘している。これらについてこそ、反論があれば記事にしたらいいのではないか。読売の岡田遼介政治部記者による解説記事「誤認や憶測 一方的な内容」(5月31日)でも触れられていなかった。ケイ報告と政府の反論の内容については同日掲載の要旨を参考にしたが、記者クラブ制度について言及した部分は「(略)」とあった。誤解でも嘘でもないということなのだろうか。

 

 読売社説や産経主張は、「日本の現状をどこまで理解した上でなのか。甚だ疑問である。日本のメディアや法制度などへの理解を欠き、不当な内容が目立つ」とは言えまいか。

 

 ■民間人も監視される

 

 ケイ氏の調査に協力した藤田早苗氏(英エセックス大学人権センターフェロー)が講演で、政府の情報機関に身辺を調査されたことを明かしていた。月刊誌「FACTA」(2016年6月号)が報じている。国際人権団体「ヒューマンライツ・ナウ」の事務局長を務める伊藤和子弁護士らの動向に世耕弘成内閣宣房副長官(当時)が関心を寄せ、内閣情報調査室などに監視を指示した、ともその記事には書かれていた。調査内容のメモの一部が永田町に流れたことからわかったという。藤田氏のこともそのメモに記述されていたらしい。メモの真偽ははっきりしていないが、官邸の方針に異議を唱える文科省事務次官の身辺まで監視される時代である。寒々しい出来事だ。

 

 産経主張は「特別報告者を含め、国連機関の施策などNGO(非政府組織)や市民団体など民間からの要望や情報が反映される例は少なくない。そこに、日本をおとしめる宣伝活動が入り込んでいるのを、放置することはできない」(6月15日)と表明した。こうした国連の調査に協力した人権活動家が、その政府によって弾圧される国があると聞く。6月に成立した共謀罪法(改正組織犯罪処罰法)は、組織的信用毀損・業務妨害、組織的な威力業務妨害も対象にしている。読売・産経が共謀罪に賛成する論陣を張った理由の1つには、ひょっとするとそうした狙いもあったのかもしれない。

 

 日本にも監視だけでは済まない時代が到来するのだろうか。

 

ーーーーー

 

 最後までお読みいただきありがとうございました。何を感じ取られたでしょうか?

 

 

 

 明日もゆっくりのんびりいきましょう。